一人はみんなのために、みんなは一人のために、当事者は当事者のために
AWS(Abused Women Support)

お知らせ

3.18「届け、当事者の声シンポジウム」レポート


2012/03/24

届け!当事者たちの声 自らのストーリーが生みだす力

3月18日 (日) の 午後、港区南青山6丁目のウェスレーセンターは、満席の熱気にあふれた。「東京都DV被害者支援体制整備等助成事業」での表記イベントが女性ネットSaya-SayaとAWSとの連携事業のキックオフ・イベントとして開始されたからである。

まず最初に協賛のウェスレー・ファウンデーション代表理事のキャシー・バートン・ルイスさんにご挨拶いただいた。

次に10代20代の生きづらさを抱える女の子のための女性による支援活動を実施するNPO BONDプロジェクト代表の橘 ジュンさんの講演。橘さんは10代のころ、言葉にならない苛立ちを抱え、レディースチームを率いていたが、取材者にじっくり話を聞いてもらった経験が転換点となった。そこで今度は取材者となって深夜も渋谷を去らない少女たちから話を聞かせてもらうことを続けた。TV放映されると非行、依存症、リストカット、引きこもりなどと行動化する少女より、ごく普通に見える少女たちから連絡が入るようになった。一見ごく普通の少女のほうがより苦しんでいることもあることも見えてきた。その行動の背景には、虐待、DV、レイプ、いじめ、人間関係のトラブルなどがあり、そこから自己肯定感の希薄さや、自分の気持ちや考えを表現する方法を見いだせていない状況があると考え、NPOを結成。なかなか支援につながらなかった世代に向けて声を聞こうとする取り組みをされている。

続いてコーディネーターを現在は全国女性シェルターネット 理事である野本律子さんにお願いし、シンポジウムに入った。しんぐるまざーずふぉーらむの赤石 千衣子さんが口火を切ってご自身の体験をユーモアも交えて織り込みながら母子家庭の貧困率の悪化や貧困の連鎖が社会的問題であることや東日本大震災被害者支援で見えてきた女性たちの状況等を話され、性暴力被害者交流 みかつきの小林 美佳さんは、レイプ被害が「女性の人権侵害」としての犯罪とは捉えられていない日本の状況のなかで、被害者はまだ沈黙を強いられていると発言された。

ネット上のサポートグループのような役割を果たしてきた「モラハラ被害者同盟」 主宰の熊谷 早智子さんは、モラルハラスメントという言葉がまだあまり知られていなかった9年前からITの知識を生かしてネット上で問題を喚起し続けてこられ、著作も数冊を数える。フランスを筆頭に西欧では法制化もされており、人権感覚の希薄な日本で、女性も自らを守るべく知識を身につけ戦うべきと訴えられた。

最後にDV被害母子支援 「ポコ・ア・ポコ」代表の滝沢 佑有子さんはご自身のDV被害体験から今は支援者として活動され、また次世代に暴力を引き継がないためのDV被害母子支援をなさっている。けれどもこの国にはDV罪がないのでまだ安心して行動できる状態ではないという無念さを滲ませた発言があった。

確かにDV自助グループは、被害当事者女性同士がつながりあうため、その存在を知らせることと、加害者の追及から情報を秘匿することのバランスが難しく、これまでは冒険を避けざるを得なかった。けれど今回自らの体験から言葉を獲得してなかまを得、道を開いている方々に集合していただき、当事者グループ同士も、そろそろもっとネットワークしていきたいと考えた。つながりあうことは大きな力になる。主催団体のひとつであるAWSは93年に民間シェルターを開設し、ムーンストーンという当事者グループを生み出した。このグループはDV防止法の誕生に尽力し、今も活動中である(初期から10年以上のサバイバーたちが今回もスタッフとして活躍してくれた)。
Saya-Sayaも被害体験女性と子どもの心理教育プログラムや生き辛い女性のグループなどの支援を続けてきた(当日スタッフの皆さま感謝です)。被害者が社会的排除を受けることがないようにしなければならない。体験を力に成長することが可能な社会でありたい。暴力被害を離れて生き抜いた仲間から若い世代へそして、もっと広範な女性へと発信し、大きなダメージを受ける前に生きなおせる社会を創出する第一歩にしたいというのが開催の趣旨であった。ネットワークの創造を期す「むらさきロード・パレード」や「ぶどうの木」などのグループアピールももらって盛況のうちに終了した。講師のみならず参集してくださったすべてのかたに感謝したい。
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